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中国茶の学び方ー枠組みをつかみ、根拠の確かな知識を積み上げる

すべてに共通する学び方

中国茶を勉強しようと思ったとき、どのように学べば良いのでしょうか?

これはどんなものにでも共通する学び方があります。
それは、

1.全体の枠組みを学ぶ
2.根拠の確かな知識を積み上げる
3.上記を何度も繰り返して、知識の深さや情報の精度を高めていく

ということです。
順番に解説しましょう。

 

全体の枠組みを学ぶ

まず、何かを学ぼうとするときは、大きな枠組みを知る必要があります。
たとえば、語学でいえば、文法をある程度掴むことですし、どこかの都市を知ろうとすれば、まずは大まかな地形や重要な地点を把握すると思います。

もう少し具体的にお話をしましょう。

同じ嗜好品の飲料である、ワインを例にとれば、まず勉強するのは、赤ワインと白ワインの違いでは無いかと思います。
この2つの違いは、使用する部位であり、製法の違いによるものです。
この枠組みを知るためには、製法について、深い知識では無いにしても、ざっくりとした理解(皮を使う、使わない程度)を、まずはする必要があります。
さらに、葡萄の品種の違いで味が変わることや、地域による違いなどを学ぶことでしょう。
こうすることで、広いワインの世界がある程度整理され、パターン化されることになります。

中国茶、というよりもカメリア・シネンシス、いわゆるチャノキと呼ばれる植物から作られるお茶全般(中国茶、台湾茶、日本茶、紅茶)は、同じ枠組みで説明が可能です。

チャノキで作られるお茶にも、緑茶や烏龍茶、紅茶、プーアル茶など、様々な味、香りのものがありますが、それを整理していくと製法に由来する「六大分類」で、大ざっぱに6つのタイプに分けられます。
この六大分類で分かれるタイプごとに、味わいの方向性が異なります。
そのお茶が目指している方向性(香りを重視するお茶か、味わいを重視するお茶か、成分はどのようなものが多いのか等)を知ることができれば、適切なお茶のいれ方はどのようにすれば良いか、が分かるようになります。
六大分類を知るというのは、ただの蘊蓄を知ることではなく、多くのお茶をより美味しくいれて、楽しむために必要なことです。
※特定のお茶の種類(たとえば、煎茶だけ)を飲むのであれば、六大分類の知識は不要かもしれません。様々な種類のお茶を扱う、中国茶だからこそ必要なことかもしれません。

いずれにしても、まずは六大分類を掴むことが、中国茶の理解を進める上では、重要なのです。これこそが枠組みです。

しかしながら、実際に六大分類に属するお茶を飲んだことがなければ、その理解も進みません。
情報と経験が結びついて、初めて知識となり得ます。
色々なお茶を実際に飲みながら、六大分類ごとの特徴を体感していく必要があります。

六大分類とお話をしましたが、実際には6種類だけ飲めば良いというものでもありません。
緑茶は緑茶でさらに味や香りの傾向でタイプが細分化されますし、紅茶もさらに細分化されますし、烏龍茶はより複雑です。
これらを一通り飲み、情報と経験を結びつけて知識とするわけですから、このステップをクリアするには、相応の時間とお茶を飲む経験が必要になります。
少なくとも数十種類のお茶を、漫然とではなく、意識して飲む必要があるかと思います。

枠組みを学ぶ時間を短縮する方法

枠組みを学ぶことの必要性はご理解いただけたかと思いますが、具体的にはどうしたら良いのでしょうか?

「とりあえず飲んでみる」ことが正解であるかのように言われるのですが、それは一面では正しく、一面では正しくありません。

情報と経験を結びつけるという意味で、実際に飲むという行動は必須ですから、その面では正しいと言えるでしょう。
しかし、闇雲に飲むというのは、全体像をとらえるという面では、かなり遠回りになる可能性があります。

これは何故かといえば、全体像を知るためには、ある程度、俯瞰して全体を見渡す必要があります。
目の前にあるものだけを見ても、全体像は分からないということです。

これは分かりやすい例を挙げましょう。
東京という街を知りたいと来日した人がいたとします。
この人が、自分のホテルに近いという理由で、渋谷だけしか行かない、浅草と上野周辺にしか行かないとなれば、東京のイメージは随分偏ったものになってしまうでしょう。
東京を語るのであれば、もう少し色々な場所に行ってもらわないと、とても語れないはずです。

実際に住んでいる方であれば、何カ所か見どころを挙げ、そこを訪問してみたら、とアドバイスをすることでしょう。
そのアドバイスができるのは、ある程度、枠組みを理解しているからです。
つまり、最短で枠組みを理解しようとすれば、ある程度、枠組みを知っている人に話を聞くか、ガイドブックなどで調べる必要があるわけです。

ただ、中国茶に関しては問題があり、それは現時点で、中国茶の全体像をきちんと網羅している書籍が出ていないということです。
この理由は明らかで、2000年前後のブームの時期に書かれた本の多くが、お茶の専門家では無い方によって書かれたものであり、科学的に正確で無かったり、根拠の無い情報などが多く含まれているからです。
その後に出版された本の多くも、これらの書籍からの影響を色濃く受けているため、正直、全体像を学ぶのにお勧めできる本がありません。
現地の本ならば・・・とも思うのですが、中国と日本では流通の事情やお茶の好みも違うので、これまた単純に翻訳するのも難しいということになります。

ネットの情報に頼るという手もありますが、校閲を経ていないため、真偽の不確かな情報が多かったり、あるいは正しい情報であったとしても、メディアの性質上、どうしても断片的な情報になってしまいます。
あちこちの情報を繋ぎ合わせると、いびつな形になってしまうことも少なくありません。

ということで、現時点では、中国茶に詳しい方を見つけて、その人に色々と教えてもらうか、中国茶教室や講座などで勉強していただくのが一番良い方法ではないかと思います。

根拠の確かな知識を積み上げる

ある程度の枠組みができたら、その後は根拠の確かな知識を積み上げていくことです。
これは語学でいえば、文法がある程度分かったら、単語を覚えていくということに似ているかもしれません。

中国茶に関しての情報を、どんどん集めていくということになるかと思います。
ここで大事なことは、根拠が確かなものを積み上げる、ということです。

中国茶に関しては、ネット上にも色々な情報が出ていますが、真偽の不確かなものも少なくありません。
通常であれば信頼が置けるであろう大企業発信のものでも、こと中国茶に関しては、怪しげな情報であることが少なくありません。
それは先程も述べましたが、日本で発刊されている中国茶の書籍に、大きな誤りがそのまま掲載されているからです。
※たとえば、「六大分類は発酵度で分類している」というような記述。これは国際標準化機構(ISO)の茶の分類基準に書かれていないことです(製法による分類)。

それでは根拠の確かな情報というのはどのようなものなのでしょうか?

これは、いくつかのパターンがあります。

1.科学的に正しいと証明されている事項(主に成分や製茶など)
2.学術的に有力となっている学説(主に歴史など)
3.公的な機関・組織による定義
4.流通現場等で”一般的に”通用している事項

ということになります。

1に関しては、まさにエビデンスがしっかりしたものということです。
科学的に考えて明らかにおかしいものというのは、正確な知識では無いということです。
たとえば、「霧が多い地域なので、茶葉は葉っぱから水分を吸収する」のような、小学生の理科で学ぶ内容で真偽が分かるものも多く書かれています。

2に関しては、誰々から聞いた、という話ではなく、学説として定着しているものです。
日本では歴史の話になるほど、お茶屋さんの話す与太話をあたかも本来の歴史であるかのように語っているケースが散見されます。
こうしたものは現地の論文などに当たれば、大方が否定されているのですが、その情報が置き換わっていないことが多いです。
情報発信者がどこで調べたのかを明記しておらず、あまりにも話ができすぎているものは、美談としては良いでしょうが、学術的には考え物です。

3に関しては、近年、急速に進んできたことです。
中国では、お茶の業界は新規参入が多く行われる活発な業界です。
そのため、新規参入の人々が守るべきルールとして、それぞれのお茶の定義や基準を明確化しています。
これらは「標準」と呼ばれる公的な文書に記されています。ある意味、法律のような堅い文書です。
そのような文書であるので、ここに書かれていることは、公的な定義と考えても差し支えないと思います。
「法は道徳の最小限」ともいわれますが、お茶の世界でも「標準は最低限のお茶の基準」であるので、中国茶の概略を知りたい人にとっては、標準を勉強することは効率の良い方法になり得ます。

4に関しては、”一般的に”という部分が非常に重要です。
日本では経験則が重要視されるからなのか、「自分自身が見てきた」「有名な先生から聞いた」「有名な本に載っていた」などのことを根拠に挙げることが多いのですが、これは根拠としては弱いと感じます。
複数の情報ソースに当たって、それで同じ回答が出るのであれば、ある程度の信頼性が確保できますが、一人の個人が見られる範囲というのはごく僅かで、たまたまである可能性もあります。
また、中国でも、有名な先生であったとしても自分の専門外のことには見当外れのことを記していることは多々あります。

 

以上のようなことから、適切な情報を収集する上では、学術論文や標準などにアクセスして裏を取る、ということになるのですが、それは一般の方には難しすぎます。
ここは中国茶を伝える専門家が行うべき領分であり、そうした専門家の意見を上手に活用するということになるかと思います。
論拠をしっかり明示しているかどうかや論理展開に飛躍が無いかなどが、信頼できる専門家を見分けるポイントになるでしょう。

弊社で実施している「中国茶基礎講座」「標準を読む」などの講座は、上記のような考え方で運営されていますので、ぜひご活用ください。

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